一欠片の岩も地球の一部。そこから、地球の歴史が見えてくる。 – 壷井 基裕 准教授

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2014年4月24日

誰もが持っている携帯電話。その中には、鉄やアルミニウム、シリコンなどのありふれた金属や、希少なレアメタル、レアアースなど、さまざまな元素が材料として使われています。それらの元素は、元は鉱物という形で、地中に埋まっていたもの。地球上に存在する鉱物を知ることで、地球の歴史と、今の地球に対する新しい視点を得ることができます。

壷井准教授

その岩、どこで生まれました?

壷井准教授が対象としているのは、マグマが地中でゆっくりと冷却されてできる花崗岩。地球上のどこにでもある、全体としては白っぽい中に、黒いつぶつぶのようなものが見える岩石です。この岩を薄くスライスし、プレパラートを作って顕微鏡で観察したり、元素分析を行ったりすることで、地球の歴史を知ることができるのだと言います。

例えば、黒鉛を7万気圧、1500℃の環境にするとダイヤモンドに変化するように、岩石中の鉱物は温度と圧力により結晶構造が変化します。どのような鉱物が、どのような条件で変化するかについては、実験などで決めることができます。そのため、岩石のプレパラートを詳しく観察し、含まれる様々な鉱物がどのように分布しているか、さらにその成分を調べることにより、岩石がどのような環境下でつくられたのかを知ることができるのです。

花崗岩

科学を手にした「岩石名探偵」

ここから先、まるで名探偵のように、分析結果に裏付けられた確かな推理を繰り広げていきます。まず、分析から明らかになった温度や圧力の条件から、岩石をつくったマグマが深さ何kmで固まったのかを計算します。また、同位体分析という方法によって、その岩石ができてからどの程度の時間が経っているかを知ることもできます。その結果、「いつ、どこにあった岩石が、どうやって今地上に出てきたのか」を明らかにするのです。

こうした分析を様々な地点で行えば、昔のマグマから今の地表へとつながる「岩石の旅」の軌跡を知ることができます。顕微鏡で見るミクロの領域から、地球規模の動きが見えてくるのです。

原川さん

作り始めた「地球化学図」

研究は、野外に出て、地層や岩石が露出している「露頭」という場所を観察することから始まります。そこから、分析にかけるべき岩石に狙いをつけ、採取するのです。壷井准教授は、分析結果から「岩石の旅」を推理する名探偵であると同時に、良い研究材料を見つけ出す「岩石試料ハンター」でもあります。この試料ハンティング、経験の浅い学生がそう簡単にできるものではありません。そこで、2005年から教育目的で「地球化学図」を作り始めました。学生と一緒に行うこのフィールドワークでは、まず対象とする数十km四方の場所を2km四方に分割します。そして、そのひとつひとつの区画から河川堆積物サンプルを取り出し、成分分析を行い、推理とハンティングに必要な知識や感覚を身につけていくのです。

教育目的で始めた地球化学図作成ですが、地球環境に対する新しい視点も与えてくれます。例えば何らかの事故で化学物質が環境中に撒き散らされたとき、元の状態を知らなければどの程度の汚染が起きたのかを知ることができません。また、継続的に地球化学図を更新することで、地球上で起こるダイナミックな物質の循環を調べることができます。環境に配慮した新しい科学を生み出していくためには、今の地球を知ることがとても大切なのです。

問題を探しに、野に出よう

「サンプル採取がうまくいけば、今私たちの足元にある大地のでき方を知り、何億年にも渡る地球の歴史の一端を明らかにすることができるのです。それが岩石学の魅力ですね」。研究でも授業でも、化学系の研究科の中では珍しいフィールドワークを多く行う壷井准教授。自然の中から研究の対象を見つけ出すことで、観察の際の視野が広がっていき、考え方のスケールが大きくなっていくのだと楽しそうに話します。「コツコツと実験を進め、地球スケールの疑問を解き明かしていきたい人は、ぜひ仲間になってください」。

壷井研究室のメンバー