研究内容
大陸地殻をつくる花崗岩を研究しています。
花崗岩は地球にしか存在しない岩石で,今我々が立っている大陸地殻をかたち作っています。私たちの研究室ではこの「花崗岩」について分析科学の手法を用いて,その成因を解明し,「地球の歴史」を明らかにするべく研究活動を行っています。
【研究活動の紹介:屋外×屋内のハイブリット研究!】

・野外調査
野外調査を行ない岩石の示す特徴を明らかにします。“面白い岩石(花崗岩)”を探し,国内外問わず調査を行います。開放的な野外で研究活動ができるのは地質・岩石学研究の強みです!

・薄片観察
岩石を薄くしたものを「岩石薄片」といいます。髪の毛の太さ(30μm)程度まで薄くします。偏光顕微鏡という特殊な顕微鏡を用いて薄片を観察することにより,その岩石がどんな鉱物からできているのか,どんな組織をしているのかを明らかにし,その岩石が辿ってきた形成メカニズムを考えます。

(中央) 薄片作成の前後。岩石をスライドガラスに貼り付け,光が通るくらいに薄くします。
(右) 偏光顕微鏡を用いた薄片の写真。試料は助教が研究している斑れい岩と花崗岩
・化学分析
岩石サンプルについて「いつ」「どこで」「なにから」「どうやって」できたのか,その成因に迫るため化学分析を行います。壷井研究室では,この化学分析を得意としています。
〜化学組成分析〜
岩石を構成する元素を分析することにより,岩石の形成プロセスを考えます。岩石を砕いて粉にし,文字通り煮たり(1200℃で溶融),焼いたり(X線やプラズマを照射)します。

(右上) 主要元素組成の活用例(下岡ほか, 2024, 岩石鉱物科学)
(下) 微量元素・希土類元素組成の活用例(Koga et al., 2021, Minerals)
〜同位体組成分析〜
質量分析計を用いて岩石中の同位体組成を分析することにより,岩石が「いつ」「なにから」できたのかを考察します。岩石の同位体組成は生物で言う遺伝子情報のようなもので,岩石を形成したマグマのもととなる物質の推定を行うことができます。また,元素の放射壊変のシステムを用いることで,岩石ができてからどれくらいの年月が経ったのかを推定することもできます。
-Rb-Sr全岩アイソクロン法-
岩石中のSrには84Sr,86Sr,87Sr,88Srの4種類の同位体が存在します。84Sr,86Sr,88Srは非放射起源の同位体ですが,87Srは87Rb放射壊変によって生成されます。岩石中の87Rbは時間経過により87Srに変化するため,岩石自体のSr同位体比(87Sr/86Sr)は時間とともに大きくなります。同一岩体中の異なる試料について同位体比の測定を行い,得られた測定値を縦軸87Sr/86Sr,横軸87Rb/86Srのグラフ(アイソクロン図)にプロットすることで得られる直線をアイソクロンといいます。このアイソクロンの傾きと縦軸との交点から年代とSr同位体初生値(火成岩形成時の87Sr/86Srの値)を得ることができます。このSr同位体初生値をその他の岩石と比較することにより,マグマの起源物質を推定することができます。

(中央・右) Rb-Srアイソクロン法の活用例(Xue et al., 2024, Minerals)
・考える
得られたデータから,その岩石がどうやってできたのかを過不足なく説明できるモデルを考えます。

(右) 下岡ほか(2024, 岩石鉱物科学)
【研究活動の紹介:実は花崗岩だけじゃない!】
花崗岩の成因研究を主とする研究室ではありますが,研究室生の「知りたい!」を突き詰め,バリエーション豊かな研究を行っています。
・コンクリーションに関する研究
・岩石の風化過程に関する研究
・化石化のメカニズムに関する研究