光学活性環状化合物の合成

 

 ホスフィンの反転障壁は窒素原子よりも高く、ホスフィンのリン原子は炭素原子と同様にキラル中心として利用できます。また、ホスフィンは非共有電子対を有しているため、各種遷移金属に配位することが可能です。我々は、このような特徴を有するホスフィンに着目し、特にP−キラルビスホスフィンをビルディングブロックとして用いることで、光学活性ポリマー[1]・オリゴマー[2]・環状化合物[3]を合成してきました。中でも、クラウンエーテルの酸素原子の一部をキラルリン原子に置き換えた「光学活性ホスファクラウン」の合成と特性評価に注力しています[4]。

 

 

3-1

 

 1967年にPedersenがクラウンエーテルを報告して以来,様々なクラウンエーテル誘導体が合成されてきましたが,不斉リン原子を環骨格に有する光学活性ホスファクラウンを合成した例はありませんでした。当研究室が合成した光学活性ホスファクラウンは、ゲストと相互作用できるヘテロ原子に不斉点を有する光学活性クラウンエーテル誘導体合成の初めての例です[4]。

 

3-2

 

 光学活性ホスファウラウンはキラルリン原子が織り成す不斉空間を構築しているのみならず、ホスフィンに特徴的な遷移金属への高い配位能があります。配位子を有する遷移金属はクラウン環の外側に補足され[4a-c]、アルカリ金属はクラウン環の内側に補足されます。アルカリ金属包摂のサイズ選択性が一般のクラウンエーテルと異なることも分かりました[4f]。光学活性ホスファウラウンは単なる金属配位子としての応用にとどまることのない新しいタイプの光学活性分子として様々な応用展開が期待されています。

 

参考文献

[1] For example, see: Imoto, H.; Morisaki, Y.; Chujo, Y. Chem. Commun. 2010, 46, 7542-7544.

[2] For example, see: Morisaki, Y.; Ouchi, Y.; Naka, K.; Chujo, Y. Chem. Asian J. 2007, 2, 1166-1173.

[3] (a) Morisaki, Y.; Ouchi, Y.; Fukui, T.; Naka, K.; Chujo, Y. Tetrahedron Lett. 2005, 46, 7011-7014. (b) Morisaki, Y.; Imoto, H.; Ouchi, Y.; Nagata, Y.; Chujo, Y. Org. Lett. 2008, 10, 1489-1492. (c) Morisaki, Y.; Imoto, H.; Kato, R.; Ouchi, Y.; Chujo Y. Heterocycles 2012, 85, 2543-2550.

[4] (a) Morisaki, Y.; Imoto, H.; Tsurui, K.; Chujo, Y. Org. Lett. 2009, 11, 2241-2244. (b) Morisaki, Y.; Imoto, H.; Hirano, K.; Hayashi, T.; Chujo Y. J. Org. Chem. 2011, 76, 1795-1803. (c) Morisaki, Y.; Kato, R.; Chujo Y. J. Org. Chem. 2013, 78, 2769-2774. (d) Kato, R.; Morisaki, Y.; Chujo Y. Asian J. Org. Chem. 2015, 4, 1410-1416. (e) Kato, R.; Watanabe, H.; Morisaki, Y.; Chujo Y. Heterocycles 2015, 91, 2295-2306. (f) Morisaki, Y.; Kato, R.; Chujo Y. ChemistryOpen 20165, 325-330.


 

Copyright © School of Science and technology,Kwansei Gakuin University. All Rights reserved.