スルースペース共役系の構築

 [2.2]パラシクロファンは二枚のベンゼン環が面と面で向かい合った積層構造を有している化合物です。面と面の距離は約3Åと短く、ベンゼン環同士が相互作用しています。例えば、この化合物にπ共役系化合物を導入すると、π共役系化合物が部分的に積層した構造が得られます。

 

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 以下に[2.2]パラシクロファンの積層構造に着目した研究内容を紹介します。

 

1.π共役系積層高分子・オリゴマーの合成

 π共役系高分子やオリゴマーの主鎖骨格に[2.2]パラシクロファンを規則正しく組み込むことにより、π共役系が一次元に積層した「π電子系積層型高分子・オリゴマー」の合成に成功しました[1]。π共役系が2〜10枚積層したオリゴマーを単離して詳細に物性を検討したところ、π共役系の積層枚数に依存して、各物性値が連続的に変化する(共役長が拡張する)ことが分かりました[2]。このような空間を介して共役長が拡張する系が「スルースペース共役系」です。

 

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 得られたスルースペース共役系高分子の基底状態・励起状態における特性を明らかにするとともに、スルースペース型のπ共役系高分子が結合型高分子よりも良いホール輸送特性を示すことが分かりました。

 

 

2.一方向に情報を伝達する分子ワイヤー

 積層するπ共役系は互いに相互作用しつつも、それぞれが基底状態・励起状態において独立していることを明らかにしました。そこで、エネルギーバンドギャップ(最高占有軌道 HOMO と最低非占有軌道 LUMO のエネルギー差)に勾配をつけることにより、エネルギーが一方向に移動する分子ワイヤーを合成しました。この分子ワイヤーは自然界に匹敵する効率かつ速度で、空間を介して一方向にエネルギーを輸送することが分かりました[3]。

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 エネルギー準位(HOMO と LUMO の準位)に適切な勾配をつければ、電子やホールを輸送する分子ワイヤーを構築することができます。輸送した電子を還元反応に用いるべく(光駆動物質変換反応に応用すべく)検討を重ねています。なお、光励起により輸送したホールと電子を電極から取り出すことができれば太陽電池に応用できます。

 

3.π共役系積層ネットワークポリマー(多孔性共役系高分子)

 四置換の[2.2]パラシクロファン化合物をビルディングブロックとして共役系高分子を合成しました[4]。シクロファン部位がジャンクションとなった共役系ネットワークポリマーです。得られたポリマーは剛直なπ共役系骨格がジャンクションで積層した特異な構造から成り、その骨格に由来する無数の小さな穴(2nm以下の細孔)と大きな比表面積を有しています。このネットワークポリマーは蛍光発光します。細孔に様々な分子をサイズ選択的に取り込み、取り込む分子によって蛍光発光特性が変化するセンサーとしての機能を検討しています。

 

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参考文献

[1] For example, see: (a) Morisaki, Y.; Chujo, Y. Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 6430-6437. (b) Morisaki, Y.; Chujo Y. Polym. Chem. 2011, 2, 249-1257. (c) Morisaki, Y.; Chujo Y. Chem. Lett. 2012, 41, 840-846.

[2] (a) Morisaki, Y.; Ueno, S.; Saeki, A.; Asano, A.; Seki, S.; Chujo Y. Chem.–Eur. J. 2012, 18, 4216-4224. (b) Morisaki, Y.; Ueno, S.; Chujo Y. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2013, 51, 334-339.

[3] (a) Morisaki, Y.; Kawakami, N.; Nakano, T.; Chujo Y. Chem.–Eur. J. 2013, 19, 17715-17718. (b) Morisaki, Y.; Kawakami, N.; Nakano, T.; Chujo Y. Chem. Lett. 2014, 43, 426-428. (c) Morisaki, Y.; Kawakami, N.; Shibata, S.; Chujo Y. Chem.–Asian J. 2014, 9, 2891-2895. (c) Morisaki, Y.; Shibata, S.; Chujo Y. Can. J. Chem. 2017, in press (DOI: 10.1139/cjc-2016-0526).

[4] (a) Morisaki, Y.; Gon, M.; Tsuji, Y.; Kajiwara, Y.; Chujo Y. Tetrahedron Lett. 2011, 52, 5504-5507. (b) Morisaki, Y.; Gon, M.; Tsuji, Y.; Kajiwara, Y.; Chujo Y. Macromol. Chem. Phys. 2012, 213, 572-579. (c) Morisaki, Y.; Gon, M.; Chujo Y. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2013, 51, 2311-2316.


 

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