面性不斉シクロファンが拓く材料化学

 

 [2.2]パラシクロファンは二枚のベンゼン環が面と面で向かい合った積層構造を有している化合物です。この化合物に置換基を導入すると「面性不斉」というキラリティを発現します。我々は最近、置換基を二つ有する[2.2]パラシクロファン[1]と、置換基を四つ有する[2.2]パラシクロファン[2]の新規光学分割法の開発に成功しました。

 

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 2012年に我々は世界に先駆けて、面性不斉[2.2]パラシクロファンを骨格に有するπ共役系を構築し[1b]、面性不斉分子がキラルな発光である「円偏光発光」を発現することを報告しました。その後、様々なπ共役系分子・巨大分子・高分子の合成と、得られた化合物のキロプティカルな特性(キラルな光学特性)を明らかにしてきました。

 有機円偏光発光性分子は、三次元ディスプレイ開発に必要不可欠な素子・液晶材料・紙幣やIDカードの偽造防止色素・量子暗号通信の光源といった次世代材料に欠かせません。

 以下に面性不斉[2.2]パラシクロファン骨格を有する有機円偏光発光性分子の代表例を示します。

 

1.面性不斉二置換[2.2]パラシクロファンからなる光学活性π共役系分子

 面性不斉二置換[2.2]パラシクロファンをビルディングブロックとして用い、V字・N字・M字構造を有するオリゴマー[3]、三角型の環状化合物[1b,3]、ジグザグ高分子[1b,4]などを合成しています。

 

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 いずれの分子も高輝度で円偏光発光します。特に、共役系高分子が希薄溶液中において円偏光発光することを世界で初めて報告しました[1b]。励起状態においては(円偏光発光する時は)、ジグザグ構造ではなく、片巻のらせん構造になることを示唆する結果を得ました[3]。

 

 

2.面性不斉四置換[2.2]パラシクロファンからなる光学活性π共役系分子

 四置換[2.2]パラシクロファンの光学分割に世界で初めて成功しました[2]。これをビルディングブロックとして用いることで、8の字構造を有する環状化合物[2,5]、X字構造を有する分子[6]やデンドリマー(樹状高分子)[7]を合成しました。8の字構造を有する環状化合物は、これまで知られている物性値を凌駕する極めて優れた円偏光発光特性を示すことが分かりました。デンドリマーは光捕集効果と発光種の立体保護効果により、高輝度で円偏光発光するフィルムになります。

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最近では、ブーメラン型共役系化合物が二つ重なった右巻および左巻の二重らせん化合物を合成しました[8]。この化合物も高輝度で円偏光発光します。

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参考文献

[1] (a) Morisaki, Y.; Hifumi, R.; Lin, L.; Inoshita, K.; Chujo Y. Chem. Lett. 2012, 41, 990-992. (b) Morisaki, Y.; Hifumi, R.; Lin, L.; Inoshita, K.; Chujo Y. Polym. Chem. 2012, 3, 2727-2730.

[2] Morisaki, Y.; Gon, M.; Sasamori, T.; Tokitoh, N.; Chujo Y. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 3350-3353.

[3] Morisaki, Y.; Inoshita, K.; Chujo Y. Chem.–Eur. J. 2014, 20, 8386-8390.

[4] Morisaki, Y.; Inoshita, K.; Shibata, S.; Chujo Y. Polym. J. 2015, 47, 278-281.

[5] (a) Gon, M.; Morisaki, Y.; Chujo Y. J. Mater. Chem. C 2015, 3, 521-529. (b) Gon, M.; Kozuka, H.; Morisaki, Y.; Chujo Y. Asian J. Org. Chem. 2016, 5, 353-359.

[6] Gon, M.; Morisaki, Y.; Chujo Y. Eur. J. Org. Chem. 2015, 7756-7762.

[7] Gon, M.; Morisaki, Y.; Sawada, R.; Chujo Y. Chem.–Eur. J. 2016, 22, 2291-2298.

[8] Morisaki, Y.; Sawada, R.; Gon, M.; Chujo, Y. Chem.–Asian. J. 201611, 2524-2527.


 

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