局所的光異性化反応と結晶化制御

 
プラズモニックチップでは、格子結合型表面プラズモン共鳴 (GC-SPR) によりプリズムを使うことなく光を直接基板に照射して基板表面で電場を増強させることができる。本研究では、光異性化を促進する場としてプラズモン電場を利用する。まずは、UV光をプラズモン結合できるアルミニウムプラズモニックチップを作製した。
アルミニウムプラズモニックチップ上にジアリールエテン (DAE) 薄膜を調製し、正倒立顕微鏡でDAE薄膜の光応答挙動をin situ観察した。100倍の対物レンズを用いてチップ裏側(倒立側)からUV光照射を行い、DAE薄膜の開環体 (1o) → 閉環体(1c) への光異性化を行った。UV光照射されたスポット (φ= 0.28 mm) のみに異性化による吸収が見られた (Fig.1(a):黒い円内)。1日経過後も結晶化は見られなかったため、膜側 (正立側) から40倍の対物レンズを用いてより広いスポット領域 (φ= 0.47 mm) にUV光を照射した。UV光照射領域全体が1cへ異性化した (Fig.1(b)) が、その後1時間経過すると、下からの照射スポット領域の輪郭部に針状結晶が見られはじめ、5時間後には大きく成長した針状結晶が観察された。
 
光応答
Fig. 1 光学(落射)顕微鏡像。アルミニウムチップ上に調製されたDAE薄膜に (a) UV光をチップ裏側から照射直後。(b)1日経過後、UV光を膜側から照射直後。(c) 膜側からの照射5時間後。ただし像の明暗は調整済。

 
 
 
周期(=ピッチ)を300 nm としたアルミニウムプラズモニックチップ上で、平坦なアルミ薄膜(F)上からプラズモニック格子構造(P)上にわたるようにDAE薄膜(1o)を膜厚数μm で調製した。
これを正倒立顕微鏡の試料ステージにおき、20 倍の対物レンズを用いてDAE 薄膜の端部が照射スポットとなるようチップ裏側(倒立側)からUV光を5 分間照射した。UV 照射から1 時間後では、F 上では見られなかった結晶がP 上でのみ見られた。P 上では表面プラズモン増強電場によって異性化率が促進でき、それによって1c の結晶化が誘起できたと考えられる。
結晶化

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